まずは、個別元本という概念について理解してください。
そして、そこから①解約します、②(決算で)分配金を受け取ります、の2つについて税金が発生することを理解してください。
税金の計算についての考え方は、いいですね。手数料などの費用等も計算しなければなりません。
そうです、消費税も関係してきます。
個別元本とは
Aさんの例、小サンプルで考えてみます。ここがスタートです。
前提として、投資信託の基準価額は日々変動します。これは大丈夫ですね。毎日、価格が変わります。
当初、1万口1万円の投資信託だと考えます。Aさんは、基準価額10,000円の時に、50万口購入しました。
次に、しばらくしてから基準価額12,000円の時に、また50万口購入しました。
この時に、Aさんの場合の個別元本は、いくらになると思いますか?
基準価額10,000円(1万口当たり)の時 | 50万口購入 | 10,000円×50=50万円 |
---|---|---|
基準価額12,000円(1万口当たり)の時 | 50万口購入 | 12,000円×50=60万円 |
計 |
50+50=100万口 | 50万円+60万円=110万円 |
Aさん個人の個別元本は、110万円÷100万口≒つまり取得したものの平均値です=11,000円(1万口当たり)となります。
Aさんが所有する投資信託は、個別元本が11,000円(1万口当たり)で、
それを100万口持っている、ということになります。
ここまでの考え方、大丈夫ですね。何で1万口単位なの?ということは、さらりと、そんなものなんだと理解しておいてください。
この個別元本が(投資信託及び投資法人に関する業務における計算問題の)スタート台です。
ここから、次のステップ(計算問題)につながっていくのです。
次のステップ(外務員の試験問題として)
2つにパターン化されます。下の図をご覧ください。
通常は、①のタイプの出題がメインです。
それぞれについて、さらにパターンを見ていきたいと思います。
1.解約の時の計算と税金
信託財産留保金(信託財産留保額)、という単語が登場します。換金時という単語が頭に付いたりもします。
この、換金時信託財産留保金(信託財産留保額)というのは、いうならば、中途解約によるペナルティ(違約金)のようなものです。違約金手数料と考えてください。
2つのパターンを練習してみます。
受取金額の算出
個別元本・・・11,000円(1万口当たり)
保有口数・・・100万口(平成○年○月○日買付)
換金時基準価額・・・12,000円(1万口当たり)(平成○年○月○日)
換金時信託財産留保額・・・基準価額の0.5%
という条件の時に、受取り金額はいくらになるか? ただし特定口座での保管をしていなかったものとする。
という問題が、まずは基本になります。
※この特定口座での保管をしていなかった、という条件は(ここでは)あまり気にしないでおいてください。
※特定口座での保管・・・・・源泉徴収あり、と源泉徴収なし、の特定口座があります。(源泉徴収ありだと、換金時に税金が源泉徴収されますので、この問題では特定口座ではありませんよ、ですから税金の計算は不要ですよ、という形になっています)
※特定口座での保管なし・・・確定申告しての、申告分離課税となる。・・・つまり、今の時点で税金は発生しない。計算問題としては税金の算出までは関係ないですよ、ということになります。
まずは、ペナルティの金額を算出します。解約(換金)時の基準価額は、12,000円ですから
12,000円×0.5%=60円
12,000円-60円=11,940円・・・これが、換金時の価額です。換金価額となります。
これに口数を掛けて、11,940円×100万口/1万口=1,194,000円
119万4000円が、受取金額となります。ここまで、大丈夫ですか。この時点では、個別元本は関係ありませんね。
今度は、個別元本を加味して、さらに取得時の手数料等も加味した形での問題を練習してみます。
譲渡損益の算出
個別元本・・・12,500円(1万口当たり)
保有口数・・・100万口(平成○年○月○日買付)
換金時基準価額・・・12,800円(1万口当たり)(平成○年○月○日)
換金時信託財産留保額・・・基準価額の0.5%
取得時の手数料等・・・1%(消費税率8%)
という条件の時に、受取り金額譲渡損益の額はいくらになるか?
ただし、個別元本は取得時から変わっていないものとする。
という問題です。
前の問題からすると、数値が(金額が)変わってきています。ご注意ください。
まずは、ペナルティの金額を算出します。解約(換金)時の基準価額は、12,800円ですから
12,800円×0.5%=64円
12,800円-64円=12,736円・・・これが、換金時の価額です。換金価額となります。
これに口数を掛けて、12,736円×100万口/1万口=1,273,600円
ここまでは大丈夫ですね。
次は、譲渡損益を計算するために、取得した時点の手数料等を算出します。
手数料・・・12,500円×1%=125円
その分の消費税・・・125円×8%=10円
合計で個別元本を取得した時の費用の合計は(手数料等・消費税を加算します)
12,500円+125円(手数料等)+10円(消費税)=12,635円・・・これが、取得価額です。
12,635円×100万口/1万口=1,263,500円
あとは、1,273,600円-1,263,500円=10,100円
※最後まで100万口を掛けずに計算してきて、最後に100万口を掛ける手もあります。その方が簡単かも知れません。
12,736円-12,635円=101円
101円×100万口/1万口=10,100円
この場合、譲渡益が10,100円でした、ということです。ここまでの2つのパターン、理解できましたか?
次は、分配金での計算問題にチャレンジしてみます。
2.(決算での)分配金の計算と税金
まずは、用語解説からです。分配落ち、という単語について学習します。
株式を取得していると、決算の時に、配当金が支払われます。
同じように、投資信託の場合は、分配金が支払われます。この分配金が支払われることを分配落ち、といいます。
具体的には下のイメージです。
個別元本 (1年前の基準価額だとします) |
○○○○○ ○○○○○ 10,000円 |
|
---|---|---|
決算時の基準価額 | ○○○○○ ○○○○○ ○○ 12,000円 |
|
【ケース1】 2,000円が分配金 |
○○○○○ ○○○○○ | ○○(分配金) 2,000円もらってバンザーイ! |
決算後の基準価額 分配落ち後の基準価額 (決算後の個別元本) |
○○○○○ ○○○○○ 10,000円 |
|
【ケース2】 または、1,000円が分配金だった場合 |
○○○○○ ○○○○○ ○ | ○(分配金) 1,000円 |
決算後の個別元本 | ○○○○○ ○○○○○ ○
もし、換金(解約)したら・・・分配金とは別に |
この、2,000円とか1,000円という分配金について、税金が発生する、というのは理解できますね。「儲け」の部分ですから・・・
では、こんなケースだと・・・どうなると思いますか?
個別元本 (1年前の基準価額) |
○○○○○ ○○○○○ 10,000円 |
|
---|---|---|
決算時の基準価額 | ○○○○○ ○○○○ 9,000円 |
|
それでも1,000円が分配金 | ○○○○○ ○○○ | ○(分配金) 1,000円もらってバンザーイ? |
決算後の基準価額 分配落ち後の基準価額 (決算後の個別元本) |
○○○○○ ○○○ 8,000円 |
※利益からの分配金ではなくて、元本部分を削っての(取り崩しての)分配金、です。単純にバンザーイ!とは喜べませんね。
現実の世界では起こり得ます。ガビーン!です。
この場合の税金は?・・・ここで登場してくるのが普通分配金と特別分配金です。簡単に整理してみます。
普通分配金(課税) | 特別分配金(非課税) |
---|---|
10,000円が12,000円になって 2,000円(又は1,000円)が分配金のケース |
10,000円が9,000円になって 1,000円が分配金のケース |
基準価額(個別元本)が増えた部分(儲け)が税金の対象になる | 自分の元本を取り崩している |
分配金に対して課税 | 分配金に対して非課税 |
次は、試験に出るタイプを含めて3つのパターンを見ていきます。あと少しです。頑張ってください。
真ん中のタイプが、試験に出やすいというのは予想できますね。
全額非課税 | 一部ずつ | 全額課税 |
---|---|---|
個別元本10,000円 | 個別元本10,000円 | 個別元本10,000円 |
決算時 9,000円 | 決算時 12,000円 | 決算時 14,000円 |
分配金 3,000円 | 分配金 3,000円 | 分配金 3,000円 |
分配落ち後6,000円と 分配金3,000円 |
分配落ち後9,000円と 分配金3,000円 |
分配落ち後11,000円と 分配金3000円 |
全額(取り崩し)非課税 | 1,000円は非課税 2,000円は課税 |
全額、課税 |
決算後の個別元本(再スタート) 6,000円 |
決算後の個別元本(再スタート) 9,000円 |
決算後の個別元本(再スタート) 11,000円 |
※決算後の個別元本=個別元本-特別分配金(元本の払戻金)・・・新しい個別元本(再スタート)というのは理解できましたか?
この新しい(決算後の)個別元本を算出する問題も出題されたりします。
真ん中の課税と非課税が組み合わさったパターンがよく出題されます。
あとは、実際に税額を算出したり、その税金の額を引いて(引いた後の)実際の受取金額まで算出する、という問題も出題されたりします。
次のまとめにある、練習問題にチャレンジしておいてください。
税金についても(関連する部分を)少しだけ頭に入れておいてください。⇒ 分配金の税金
まとめ
⇒ 練習問題