会社設立は(資本金を除けば)約25万円くらいの費用で、割と簡単に(司法書士などに依頼しなくても)設立することができます。
会社名や住所などを決めて、何をする会社か定款を作成して、定款認証を公証人役場にお願いして、法務局に登記してもらって・・・という流れで設立することができます。
ここでは、会社設立に大切な定款やその他の事項、株式等について理解してください。
【目次】
会社の種類
前提となるのが「会社法」という法律です。すべてはこの法律で決められています。
株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4つ、会社の種類が認められています。
※ただ、昔は、有限会社というのがありました。株式会社が資本金1,000万円以上必要だったのに対して、300万円で会社設立できたのが有限会社です。・・・現在は下限額の制限が撤廃されたため、1円から株式会社を設立することが可能です。
有限会社そのものは、当然(今でも)存在していますし、これからも存在し続けます。ただ、新しく有限会社という会社を設立することはできません、ということです。
生命保険会社の形態として、相互会社というのがあります。・・・会社法における会社ではありません。保険業法において認められている会社形態です。
※株式会社・・・社員(株主)は、会社の債務について何の責任も負いません。会社の経営を任された経営陣の責任になります。
※合名会社・・・会社の構成員(出資者)である社員は、会社に対して出資義務を負うだけでなく、会社の債務について、債権者に対して直接・連帯・無限の責任を負います。
合資会社・・・有限責任社員と無限責任社員に分かれます。
有限責任社員 | 無限責任社員 |
---|---|
登記した金額の限度までしか責任を負わない(無限責任社員+1名以上) | 上記、合名会社の社員と同じ責任を負う(最低1名以上) |
合同会社・・・社員が有限責任社員のみの会社
株主の有限責任の原則・・・株式会社に出資した株主は、
・会社がさらに資金を必要とした場合でも、追加出資の義務はない。
・また、会社が債務を払えなくても、株主が会社債権者に対して弁済の責任を負うこともない。
株式会社と区分
大会社という概念を覚えておいてください。・・・注意 ※ 大企業、中小企業という区分とは別ですよ。
大企業、中小企業という区分は、中小企業基本法という法律で、中小企業の定義がされていますが、その中小企業でないものが大企業です、という区別の仕方です。(製造業では資本金が、従業員数が・・・、卸売業では・・・、サービス業では・・・という定義です)
大会社、です。大企業ではありません。
大会社とは
資本金の額が、5億円以上、又は負債総額が200億円以上の株式会社、を大会社という。その大会社には、厳しい規制があります。
・必ず会計監査人を置かなければならない。
・大会社のうち、公開会社は、必ず、取締役会を置かなければならない。
・大会社のうち、公開会社は、委員会及び執行役、又は監査役会を置かなければならない。
※大会社かどうかの判定は、最終事業年度の貸借対照表における資本金の額及び負債総額を基準に判断することになります。
公開会社とは、株式会社のうち、証券市場に上場するなどして株式を公開している会社のことです。
この定義を難しく証券外務員の試験風に言うと、
発行する株式の全部又は一部の譲渡について、その株式会社の承認を要する旨の定めを定款に設けていない株式会社のことを公開会社という、となります。
・・・つまり、譲渡制限のない株式を発行できる会社、です。自由に市場で売買できる、ということです。これ、大丈夫ですね。
当然、それだけ不特定多数の人に渡っていく・流通していく、可能性がありますからそれなりの規制がかかっています。
・必ず、取締役会を置かなければならない。
・議決権制限株式の発行は、発行済み株式総数の2分の1以下にしなければならない。・・・このまま覚えておいてください。3分の1ではありません。
会社設立
会社設立の事務的な手続き・流れを単純に説明すると、こんな感じになります。
・定款を作成します(会社の目的や会社名・住所などを記載) ⇒ 発起設立と募集設立(資本金となるお金を集めます) ⇒ 役員の選任 ⇒ 登記 というような流れです。
定款
株式会社を設立するには、発起人が定款を作成して署名します。(発起人は、1人でも可。法人でもOK・・・親会社が発起人となって、別事業をする子会社を設立するという形も当然可能です)
定款には、たとえば
・飲料水販売業
・コンサルタント業
・〇〇の加工・製造・販売業・・・といったように具体的に、何をする会社かということで目的を記載します。
定款に記載するように決められているのは、会社の目的、商号、本店所在地、その他事項などです。(絶対的記載事項、というのがあります)
最初、○○商店とか○△商会、あるいは○○クリニックといった形で、個人で事業を営んでいた人(社長・先生など)が、会社設立する時に、それまで自分の名義で使っていた、店や工場などの土地建物、工場内の機械やクリニックでのレントゲンとかMRIとかの医療機器などを、現物として出資することも可能です。
お金の代わりに、現物を出資する(=金銭以外のものを対価に株式を発行すること) ⇒ 現物出資、といいます。
発起設立と募集設立
設立の際、発行する株式の全部を、発起人だけで引き受ける形の設立方法を、発起設立、といいます。
たとえば、ご主人と奥さまの2人が発起人となる場合などです。(1,000万円の出資金のうち、9割をご主人が出して、奥さまが1割出す、というようなパターンなどです)
もちろん、発起人1人で(上の場合だと、ご主人1人です)全額出資しても構いません。当然、1円でもOKです。
次は、募集設立です。上の事例のご夫婦だけでスタートする時に、お友だちや知人などが(一般の第三者も含めて)株主として、参加するパターンです。
発起人が呼びかけて、株主を募集して、会社を設立する。募集設立、です。
(テストには出ないと思いますが)あとは、出資金を預金通帳に入れて、OKです。実際に決めた出資金の分だけ預金通帳に残高があれば、その証拠書類を持って設立登記に進めます。(※まだ、会社の通帳をつくることはできませんから、発起人の通帳に入金されていることが必要です)
役員の選任
登記の前に、役員を決めます。取締役を選任します。(最終的な社長、代表取締役はその取締役から選任される形ですね)
(監査役設置会社の場合は、監査役を選任します)
⇒ そして、設立が適正に行われたか、調査することになります。
登記
最後、いよいよ設立登記です。法務局に登記申請します。
登記によって(正式に)会社設立、となります。登記するまでは、いくら名刺に会社名を印刷したものなどを用意して、会社名で活動しても、認められません。
実際、登記されないと銀行で会社名義の通帳をつくることはできません。
会社設立のまとめ
重要な事項を再掲です。
・1人でも発起人OKでしたね。1人だけの株主の会社を設立することが、可能だということです。
・法人が発起人になることもOKでした。
もう1つ、会社設立の無効について、です。法令違反があれば無効となりますが、設立の無効を主張できるのは、株主と取締役(会社の種類によっては、監査役、執行役、清算人を含みます)だけです。かつ、設立登記の日から2年以内です。裁判所に訴えることで主張することになります。
たとえば、定款の絶対的記載事項に不備・漏れがあった(不完全)とか、創立総会を開催しなかったとか、大部分の株式の引受・払い込みがなかった、という場合などです。
⇒ 練習問題
株式について
株主の有限責任の原則、についてはいいですね。追加出資の義務はない、ということと会社が債務を払えない場合でも株主には(会社の債権者に対して)弁済の義務はない、ということでした。(思い出しておいてください)
逆に、株主の権利についてみていきます。配当金がもらえたり・・・という株主の権利です。
その前に単元株について説明します。
単元株(制度)
証券取引所で売買される時の、上場株式の単元はそれぞれ(定款で)決められています。1株単位なのか、100株単位なのか、1,000株単位なのか、という時のくくり=単元、です。(最大1単元が1,000株まで)
この単元株式ごとに、1個の議決権を持てる形です。1,000株単位なのに、1,580株持っていても、議決権は、1個だということです。
もし、この場合に2,000株持っていたら、議決権は2個、になります。この考え方、いいですね。
ということは・・・単元未満株(上の例だと580株)の株主は、議決権は持たない(持てない)ということになります。
※ただし、会社が解散した時の残余財産や、分割・併合された株式などを受け取る権利は、単元未満株にもあります。
では、株主の権利についてです。自益権と共益権という概念があります。
自益権と共益権
・自益権・・・株主個人の利益だけに関係する権利・・・(剰余金の)配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利
・共益権・・・株主権の行使が株主全体の利害に影響する・・・議決権
もう1つ、株主の権利については別の切り口があります。
・単独株主権・・・1株しか持っていない株主でも行使できる権利
・少数株主権・・・一定割合(又は一定個数)以上の議決権を持った株主だけが行使できる権利(もちろん異なる株主が株数を合わせることも可)⇒
⇒株主の提案権、取締役・監査役などの解任を求める権利、帳簿閲覧権など
同じ種類の株式の権利は、平等です。ただ、持株数(持ち株数)に応じて会社に対しての権利を所有する、という考え方です。
株式の種類
定款によって、(同じはずの株式の権利について)、株式の内容に修正を加えることができます。
・・・すべてを修正しても、一部を異なる権利内容にしても、どちらも可能。
この、一部を異なる内容にした場合、同じ会社の株式なのに2種類以上の株式が存在することになります。・・・これを(このような会社を)、種類株式発行会社、と呼びます。
この発想から誕生した形の株式が、優先株と後配株(劣後株)です。
優先株 | ある種類の株式に、まず一定の配当を支払って、残った剰余金から他の株式に配当をするような場合、前者を優先株という。 |
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後配株(劣後株) | 標準となる一般の株式(普通株)に配当した後、残った剰余金からしか配当を受け取れない株式を、後配株(劣後株)という。 |
議決権制限株 | 議決権100%なし、一部あり、といった株式。完全な議決権のある株式以外は、議決権制限株となります。 ※この議決権制限株が、発行済み株式総数の1/2を超えると、公開会社はアウトです。直ぐに1/2になるように措置をとる必要があります。 |
譲渡制限株 | 譲渡するのに会社の承認が必要な株。 |
取得請求権付株 | 株主が請求すれば、会社が買い取ることを発行時点から約束している株式。 |
取得請求権付株は、取得の対価が金銭でなくてもいいのです。別の種類の株式であったり、他社の株式であったり、社債その他の財産で構いません。
この取得請求権株は、株主からの請求ですが・・・株主⇒(請求)⇒会社、逆に・・・会社⇒(請求)⇒株主、というのもあります。
取得条項付株式、というものです。一定の事由が生じた時に、会社側が株主に対して株式を取得することを発行時点から約束しているものです。(頭の片隅で結構です)
取得請求権付株と同じように、取得の対価は金銭以外、その他の財産でもOKです。
株式の善意取得
善意の第三者と、ドロボーが絡んだ時の話です。
A・・・元々の株式の所有者
B・・・Aの株を盗んだヤツ
C・・・Bから知らずに株式を取得した人(Bが、Aのものを盗んだものとは知らなかった)
D・・・Cから株券を譲り受ける時に、元々はAが失くしたものだということを、知っていた
1.Aは、Bに株券を返せ、と返還請求ができます。・・・当たり前ですね。
2.Cが、Bを権利者と信じていたなら、(重大な過失等がなければ)、Cは権利者になります。
3.同時に、Aは権利者では、なくなります。・・・Aは、Cに、株券の返還を請求できない、とうことになる。
4.Dの取得は、有効です。知っていたのに、有効です。
このケースを株式の善意取得といいます。
株式の譲渡と譲渡制限
株主は、投資している会社への応援を止めたい時は、いつでも株式を譲渡(売却)することができます。当たり前の話ですね。
その株式に対して、定款でうたって、取締役会の承認が必要ですよ、といったような制限を加えることができます。
この譲渡制限のついた株式は、金融商品取引所に上場することはできません。
逆に、株主は、譲渡制限を加える定款変更に対しては、反対の場合、株主買取請求権を行使することができます。対抗措置です。
あと一つ二つ、譲渡制限に関連して・・・
※会社設立登記前の株式がまだ存在しない時点で、株主となる権利を譲渡しても、譲渡そのものは有効ですが、会社に対抗することはできません。何となくイメージ的に分かりますね。
※5%ルールです。金融会社(銀行業を営む会社)が、ある内国会社の議決権の5%超を持つことは、原則禁止、です。
自己株式(金庫株)
会社が自分で自分のところの株式を取得することは、昔は、商法で原則ダメでしたが(会社が支配権を強めることにつながり、株主の権利を侵害するわけですから)、今は、認められています。金庫株とも言われます。
ただし、弊害を防ぐために・・・
自己株式の取得・処分については、その手続き、財源、買付方法、取締役会の責任などが定められている。
親子関係の会社での株式取得
子会社が、親会社の株式を取得することは、原則、禁止。
株券と名義書換
会社法・・・株券のない会社が原則・・・株券を発行しようという会社は定款に定める必要あり・・・株券発行会社、と呼ばれる。
株主名簿、というものがあります。
株式の譲渡、相続があっても、株主名簿に名義書換がなされるまでは、新株主は、自分が株主であるということを主張することはでません。
また、株券を失くした場合は、再発行を求めることができます。株主でなくなるわけではありません。
まとめ
⇒ 練習問題