内部者取引(インサイダー取引)の規制についての説明です。
ある会社に所属する人物なら、その会社が何を計画しているか、場合によっては機密事項や近未来に(たとえば、翌月とか・翌期とか)記者発表をする内容などについても(事前に)知っているケースがあります。
そんな会社の未公表の情報を利用して有価証券の取引を行うことは、内部者取引(インサイダー取引)として禁止されています。
【目次】
内部者取引(インサイダー取引)とは?
会社の役職員などの会社関係者やその会社関係者からその会社に関する重要事実などの情報を容易に入手できる立場にある者が、入手した情報を利用して、それが公表される前に、当該会社が発行する有価証券の取引を行うことを内部者取引(インサイダー取引)といい、禁止されています。
いったん、重要事実が公表されてしまえば、内部取引者には該当しません。
内部者取引の要件
直接の会社関係者でなくても関わってきます。会社関係者から、その会社に関する情報を容易に入手できる立場にある人なども含まれます。
会社関係者の範囲は?
- 上場会社等の役員等(役員、使用人、従業員、親会社・子会社の役員等含む)
- 上場会社等の帳簿閲覧権を有する株主
- 上場会社等に対して、法令に基づく権限を有する者(許認可権、立入検査権、議員の国政調査権等)、帳簿書類の閲覧請求権者等
- 上場会社等と契約している者(取引銀行、公認会計士、引受人、顧問弁護士等)
- 会社関係者でなくなってから1年以内の者
- 第一次情報受領者(上記の会社関係者から情報の伝達を受けた者)
上場企業を辞めて(退職して)1年以内の者は、会社関係者に当たります。
重要事実とは?
次の事項として列挙いたしますが、その前に注意する点を1つ・・・
下記に挙げる事項を、行うことを決定したこと(もちろん未公表です。公表されたら関係なくなります)
又は、いったん行うと決定した事項で(公表されたものに限る)、それを行わないことを決定したこと
※いったん行うと決定したが(未公表であって)、それを行わないと決定したことは重要事実とはなりません。当初の計画が未公表であれば、それを行わないと決定しても最初からなかったコトと一緒ですから。
この上の違いは大丈夫ですね。
【重要事実・決定事項】
以下の事項の決定、又は決定した事項で、かつ公表されたもので、行わないことの決定をしたもの
- 募集株式・新株予約権の募集
- 資本金の額の減少
- 株式無償割当て
- 株式の分割
- 合併
- 会社の分割
- 事業の全部又は一部の譲渡又は譲受
- その他たくさん
【重要事実・発生事実】
以下の事実が発生したこと
- 災害に起因する損害又は業務遂行の過程で生じた損害
- 主要株主の異動
- その他
※主要株主とは・・・総株主等の議決権の100分の10以上の議決権を保有する株主をいう(1割以上保有ですね)
【重要事実・売上等の予想値からの大幅な差異の発生】
売上高や利益、配当等について決算発表時などに予想されていたものと、直近のデータからの数値が大きく乖離するなどして、投資者の判断に影響大とされるような差異が発生した場合など(内閣府令で定める基準を超えるような差異)
重要事実の公表とは?
重要事実が公表されて、内部者取引(インサイダー取引)に該当しなくなるのは、どのタイミングから?
12時間ルールがあります・・・(合言葉)12と12は、PT TIME・・・(後半の)12 TIME=12時間
(前半の12は、12ポイントでした。クーリングオフ記載の文字の大きさ)
※(金融商品取引法で2つのカタカナに関係します)
クーリングオフ・・・12 PT(12ポイント)
インサイダー・・・・12 TIME(12時間)
重要事実が・・・日刊紙を販売する新聞社や通信社又は放送機関等の2以上の報道機関に公開され
かつ、公開された時から12時間以上経過した場合・・・重要事実が公表されたもの、とされるタイミング
例外・・・上場会社等が重要事実を金融商品取引所に通知し、金融商品取引所等において公衆の縦覧に供された場合・・・この場合は12時間ルールは適用されない。
内部者取引の適用除外
内部者取引の要件に該当しても、次のような場合など違法にならない場合があります。
たとえば、株式の割当てを受ける権利を有する者が、当該権利の行使により株券を取得する場合や、重要事実を知る前に締結された契約の履行等として売買等をする場合など・・・です。
その他(会社の役員と主要株主)・・・試験に出るかもの項目
※内部者取引を把握するための規定です。要は、自ら申し出てくださいね、というヤツです。そして、そんなコトされた上場会社等は儲けた分のお金を要求できます、というものです。
会社の役員及び主要株主の報告義務
上場会社等の役員及び主要株主は、自己の計算で(自分のお金で)当該上場会社等の特定有価証券の買付け・売付けを行った場合は、当該売買等に関する報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない。
※ここでいう特定有価証券とは、株券・新株予約権証券・社債券等です。
(企業内開示制度における特定有価証券とは異なります)
役員又は主要株主の短期売買規制
上の状況の続き的なものです。
上場会社等の役員及び主要株主は、自己の計算で(自分のお金で)当該上場会社等の特定有価証券の買付け(又は売付け)を行った場合に、その後、6か月以内に売付け等(又は買付け等)をして利益を得た時は、当該上場会社等はその者に対して、得た利益の提供を請求することができる。
まとめ
⇒ 練習問題
合言葉が、ここで完成しました。
12と12は、PT TIME・・・(クーリングオフの文字は)12ポイント、インサイダー取引(の重要事実公表リミット)は、12時間(12 TIME)
内書(内緒)1年、引受け信用6か月・・・内(内書の内)=内部者取引でなくなる関係者、会社を辞めてから、1年
書(内書の書)=契約締結前交付書面を過去1年以内に交付していれば、書面交付義務が適用除外となる。
引受け信用6か月・・・引受人の信用供与の制限(買主に買入代金を貸し付けることのできない期限)・・・6か月を経過する日まで。