利子所得は、基本、20.42%(これは覚えなくても構いません)の税率なのですが、特例として、申告分離課税、15.315%(+居住者は5%の住民税)がある、ということをまずは覚えておいてください。
配当所得も、(実は)20.42%の税率なのですが、特例として、上場株式等の配当については(=普通のお客さま・投資者は上場株式の売買をされますが)15.315%(+居住者は5%の住民税)で源泉徴収されます。
それと、特定公社債という単語も意識して理解しておいてください。
特定公社債 | 国債、地方債、一定の公募債、外国国債、外国地方債 |
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この特定公社債を含んだものとして 特定公社債等というのがあります |
特定公社債(上記)+公社債投資信託(MMF、中期国債ファンド等)や公募公社債等運用投資信託の収益の分配などが入ります。 |
さらに、この特定公社債(等)の反対概念として 一般公社債(等)というのもあります |
特定公社債(等)以外の私募債などです。 |
※上の表の、一般公社債(等)は覚えなくても大丈夫だと思います。特定公社債については覚えておいてください。
【目次】
利子所得の前に・・・
居住者、という概念についてです。
居住者とは、国内に住所を有している個人です。又は、現在まで引き続き1年以上居所を有している個人です。となると、反対は?・・・
非居住者・・・国内に住所を有していなくて、かつ、現在まで引き続き1年以上居所を有していない個人、ということになります。
※参考までに、法人(内国法人=国内に本店又は主たる事務所がある法人)という概念も理解しておいてください。
外務員試験で、住民税というのは、居住者=個人に対してのものだと捉えてください。
法人の税金については別の概念になってきます。(覚えなくても構いませんが、法人税、法人住民税、事業税など)
それから、15.315%とか、20.315%とか、(キリのいい数値で)15%とか20%とか、といった数値が試験問題に出ることがあります。
その場合は、復興特別所得税の2.1%が別記述になっていることもあるかと思います。正確には、復興特別所得税で2.1%加算されていると、15%が15.315%になる、ということだけは忘れないでください。
利子所得について
一般の利子(預貯金)は、次のような感じです。※満期日に、20.42%が源泉徴収されて終わりです。
○月○日・預貯金(預ける) ⇒⇒⇒⇒⇒ 満期(利子) ⇒⇒⇒⇒⇒ 次の満期 ⇒⇒⇒・・・
ただし、特例として・・・
①特定公社債の利子(特定公社債・・・国債、地方債、一定の公募公社債、外国国債、外国地方債、その他)
②一定の公募公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る利子等
この、特例が・・・(源泉徴収されて終わりではなく)15.315%(+5%)の申告分離課税になる、というものです。
利子所得は、原則、源泉徴収だけど・・・特定公社債(国債や地方債)などは、申告分離課税ということです。15.315%(+5%)です。
利子所得の非課税制度
利子所得には非課税制度があります。マル優といったようなヤツです。種類と金額まで覚えておいてください。
(昔は、マル優とかマル特といった制度は一般の方にも適用されていました。それが次第に範囲が狭くなってきている形です)
マル優等は、障害者の方が対象になっています。
障害者等の少額預金の利子所得等の非課税 (マル優) (一定の要件あり) |
障害者の方(国内に住所を有する)、1人当たり、350万円の元本まで非課税 |
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障害者等の少額公債の利子の非課税 (特別マル特) (一定の要件あり) |
1人当たり額面350万円まで、マル優とは別枠 |
財形住宅貯蓄の利子所得の非課税 (一定の要件あり) |
下の財形年金貯蓄と合わせて、1人当たり累積元本550万円まで非課税 |
財形年金貯蓄の利子所得の非課税 (一定の要件あり) |
上の財形住宅貯蓄と合わせて、1人当たり累積元本550万円まで(生命保険・郵便年金は385万円まで)非課税 |
ここまで大丈夫でしょうか。次は、配当所得についてです。
配当所得について
配当所得・・・
①法人から受ける剰余金のの配当
②利益の配当
③出資に係る剰余金の配当
④基金利息及び投資信託の収益の分配
⑤一定の特定受益証券発行信託の収益の分配
に係る所得。
※注意・・・土地信託による配当は、ダメです。配当所得には含まれない。
また、配当落(はいとうおち=別に学習)調整額などによる所得も、配当所得には含まれない。
※上場投資信託(ETF)は、株式投資信託に含まれますが、(原則として)受益金は株式同じように、また分配金も、(株式と同じように)株式の配当と同じように(配当所得として)計算されます。
配当所得の計算で・・・
元本取得のための負債利子は、(経費として)控除したものが、その期間内の所得金額、となります。
株式取得(購入) ⇒⇒⇒⇒⇒ 決算(配当) ⇒⇒⇒⇒⇒ 次の決算(配当) ⇒⇒⇒・・・
⇒※配当の支払いは、20.42%が、源泉徴収されて終わりです。・・・原則
特例についてです。上場株式等の配当の場合ですが・・・
これ(20.42%)が、特例として、20.315%になる、というものです。
上場株式は、一般の個人投資家が普通に売買する商品です。国としてどんどん投資してもらって、市場を大きくしてもらって・・・売買等に伴う税金もしっかりと納めてもらえるように、税率を下げたのかも知れません。
20.42% ⇒ 上場株式等の配当等については、15.315%(+居住者は5%)の税率になる、ということです。
源泉徴収されます。これまで押さえておいてください。
配当控除
総合課税を選択して、確定申告すると、税額控除が認められます。下のイメージ図を見てください。
税額控除とは・・・課税される所得×税率 = 納める税金の額・・・という公式において、元々の課税される所得から控除される(差し引かれる)ものです。
(当たり前の話ですが)控除される金額が大きくなればなるほど、納める税金の額は少なくなる、というものですね。
課税所得金額1,000万円がバーになります。
1,000万円以下 | 1,000万円超 | |
---|---|---|
株式等 | 所得税 10% 住民税 2.8% |
所得税 5% 住民税 1.4% |
証券投資信託 (上の半分です。上を覚えてください) |
所得税 5% 住民税 1.4% |
所得税 2.5% 住民税 0.7% |
1,000万円以下 | 1,000万円超 | |
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株式 | ここだけ覚えてください。 | 右側は、その半分です。 |
合言葉 住民、ニヤリ(笑)又は、ジュニア(ジュニヤ) 所得税 10(じゅう)% 住民税 2.8(ニヤ)% |
さらに、3つのパターンに分けられます。・・・計算問題として出題あり。
要は、配当所得以外の所得と配当所得を加算した課税総所得金額が、1,000万円のバーに対して、どんな感じになっているか、ということです。
下の3つのパターンを見てください。
①と③は、単純ですから・・・機械的に、税率を掛けるだけです。
①所得税・・・30万円×10%=30,000円
住民税・・・30万円×2.8%=8,400円
・・・合計30,000円+8,400円=38,400円
③所得税・・・150万円×5%=75,000円
住民税・・・150万円×1.4%=21,000円
・・・合計75,000円+21,000円=96,000円
ここまでの計算、大丈夫ですね。
次は、②のケースです。もう(勘の良い方は)ピンときたと思います。1,000万円で2つに分けて計算する、というのがミソです。
落ちついて計算するだけです。1,000万円以下が、いくらか? そして1,000万円超がいくらになるか、というものです。
150万円の配当所得のち、50万円が1,000万円以下、100万円が1,000万円超となります。
50万円・・・所得税・・・50万円×10%=50,000円
住民税・・・50万円×2.8%=14,000円・・・小計=64,000円
100万円・・所得税・・・100万円×5%=50,000円
住民税・・・100万円×1.4%=14,000円・・・小計=64,000円
全合計=64,000円+64,000円=128,000円 となります。
慌てることなく、住民、ニヤリ、で順番に計算するだけです。
現実の世界では、確定申告して配当控除を受けた方がいいか、それとも申告分離課税を選択した方がいいかは、課税所得金額で異なってきますのでケースバイケースで考えてください。
あと、次のポイントも覚えておいてください。
配当控除した時に、控除しきれなかった場合=控除額の方が大きかった場合、です。
還付されると思いますか、それとも翌年に繰り越すことができると思いますか?
どちらもできません。還付されません・還付まではダメ!、繰越もできません・繰越不可。
※配当控除は、その年分の税額が限度なのです。
それと、外国株式等の配当は、配当控除の適用を受けることはダメ!です。できません。
上場株式等の配当等に係る配当所得での申告分離課税の選択
配当所得は、そもそも原則的には、総合課税です。ただし・・・下図のように
上場株式等の配当等に係る配当所得については、損益通算のために(他の所得とは区別して)、申告分離課税を選択することが可能となっています。
※逆は、ダメですよ。注意してください。
配当所得、一時所得、雑所得の3つは、損失の金額を他の所得プラスから損益通算によって差し引くということはできません。
ただし、上場株式等の場合は、(一定の要件のもと)譲渡により損失となったものを、配当所得の金額(プラス)と損益通算できます。
この微妙なニュアンスの違い、大丈夫ですね。
また、平成28年1月1日から、損益通算と繰越控除が改正になっています。本ページのまとめ、を参照してください。
利子所得は、そもそも経費が認められていませんので、マイナスになることはないですね。
対象となる上場株式等については、覚えておきましょう。
申告分離課税の対象となる配当等は・・・
・上場株式等の配当等(大口株主等が支払いをうけるものを除く、特定株式投資信託の受益権を含む)
・一定の公募株式等証券投資信託の受益権(特定株式投資信託を除く)の受益権の収益の分配に係る配当等
・特定投資法人の投資口(公募・オープンエンド型)の配当等
※特定投資法人の投資口とは・・・非上場であっても上場株式等に含まれるということです。
※特定投資法人とは・・・(投資口という単位で投資を募る)投資法人の中で、公募オープンエンド型の要件に該当する投資法人
繰り返しますけど、申告分離課税を選択したら、配当控除はダメです。確定申告で、総合課税の選択、です。
(現実的には、どっちが得するかはケースバイケース、です)
まとめ
利子所得(給与所得、退職所得の3つ)は、マイナスが生じることはありませんね。これは、大丈夫ですね。
配当所得、一時所得、雑所得のマイナス(損失)の金額は、他の所得からの損益通算はできない。ダメ!
逆に、譲渡所得の場合、ただし、上場株式等を譲渡した場合、(一定の要件の下)上場株式等に係る配当所得との損益通算ができる。しかも、3年内の繰越控除が認められています。
さらに、追加で認められたのが・・・(平成28年1月1日以降)
特定公社債等の譲渡によりマイナス(損失)が生じた場合には、利子所得・配当所得との損益通算が可能、かつ、3年間の繰越控除が認められました。
しかも(複雑で大変ですけど、理解に努めてください)、特定公社債に係る所得 ⇔ 上場株式等に係る譲渡損失、配当所得 との間でも損益通算が認められています。つまり、今だと(平成28年1月1日以降だと)、下図のように斜めでも損益通算できる、ということです。
⇒ 練習問題